ドッグフードの基礎知識 ~製造方法・種類・安全基準
家族の一員になった犬たちを元気に育てていくためには、健康を維持し、しっかり発育していくために必要な栄養素を毎日準備する必要があります。
ヒトと犬では、必要な栄養素が違いますので、同じメニューでは栄養が偏ってしまいます。
犬に必要な栄養素を適切に与えるために開発されたのがドッグフードです。
そもそもドッグフードとは何でしょうか?
ドッグフードとは、原料(肉類・魚介類・卵・野菜類・穀類・ビタミン・ミネラルなど)を機械を使用して製造した物、または天日干しなどの簡易な方法により製造した物で犬の飲食に供するもののことです(一般社団法人日本ペットフード協会より引用、一部改編)。
つまり、犬に必要な栄養素を含む原料を、機械や天日干しなどの方法で製造したものをドッグフードと呼びます。
ドッグフードの製造方法について
原料
原料は、主原料・副原料・少量原料・液体原料などに大別され、サイロやタンクに収容されます。
製造工程(ドライドッグフード)
- 原料をミキサーにかけ、混合します。(穀類がある場合は、粒が大きいため粉砕機にかけてから、他の原料と混ぜられます。)
- 混合された原料をエクストルーダー(加熱・加圧押出機)へ送り込みます。
- エクストルーダー内では、蒸気による適度な加温と加湿が行われ、数分間練られます。
- 次に、原料がバレルに投入されます。
- バレル内でさらに加圧、加熱され、原料が剪断、混捏されます。この過程でデンプンが、急速に消化できるαデンプンに変化します。
- バレルの先端にはダイという穴のあいたプレートが取り付けられ、この穴を通ってきた原料がカッターで切断され、形が整えられます。
- この穴の形を変えることで丸、四角、骨状などの様々な形のドッグフードができます。
- 圧力のかかっているダイを通過し、大気中に放出されたドッグフードは、圧力の変化で原料中の水分が一気に気化して膨らみます。
- 膨らんだドッグフードは水分をたくさん含むため乾燥機にかけて乾燥させます。
- 乾燥後、油脂類や嗜好性を向上させる原料がドッグフードの粒の表面に添加されます。
- 添加されたのち冷風を当てて常温まで冷やし、包装されて出来上がりです。
このような工程でドッグフード(ドライフード)は製造されています。
ドッグフードのメリット
ドッグフードは、私たち飼い主が使いやすいように次のようなことが配慮されています。
- 犬にとって必要な栄養素が配合されている
- 給餌量が体重別に設定されている
- おいしく食べやすい
- 保存ができる
- 賞味期限が設定されている
- 成分表示がある
- 小型犬・中型犬・大型犬のように体格によってドッグフードがわかれている
- 子犬(パピー)・成犬・シニア犬(高齢犬)のようにライフステージごとにドッグフードがわかれている
以上のように、私たち飼い主が購入しやすく、また与えやすいよう工夫されています。
ドッグフードと比較されるものに、手づくり食がありますが、犬の栄養に関する専門知識が必要となり、とても困難です。
ドッグフードは総合栄養食ともよばれており、犬にとって必要な栄養が全て摂れるよう作られています。
ドッグフードの分類と種類
ドッグフードの種類にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
用途による分類
一般食、準処方食(一般食と処方食の中間に位置するドッグフード)、処方食(特定の病気に用いるための治療用のドッグフード)
体格による分類
小型犬用・中型犬用・大型犬用
ライフステージによる分類
子犬用、成犬用、高齢犬用
犬種による分類
トイプードル用、ダックス用 など
原料による分類
グレインフリー、ヒューマングレード、無添加、新規タンパク質など
カロリ―による分類
低カロリ―、高カロリ―など
病気による分類
アレルギー用、糖尿病用、尿路結石用など
形状による分類
ドライフード、ソフトドライフード、セミモイストフード、モイストフード
形状の違いをもっと詳しくみるならこちら
▶ ドッグフードの種類一覧~ドライ・ウェットなど形状別メリット・デメリット
このようにドッグフードには多種多様な観点からの分類があります。
加えて、犬には犬種・年齢や病状だけでなく、人間と同じように個体差も大きいので、自分が飼っている子がどのような体質を持っているかによって柔軟に選んでいく必要があります。
犬に健康に過ごしてもらうためには、獣医師に定期的にアドバイスをもらうことに加え、飼い主側も正しい知識をつけなくてはなりませんね。
ドッグフードの安全性を確保するためのきまり
多種多様なドッグフードが販売されていますが、やはり心配なのは「安全性」です。
この安全性を守るために、日本では2008年6月に「ペットフード安全法」という法律が公布されました。
この法律は「安全なペットフードを提供することによりペットの健康を確保し、ひいては動物福祉に寄与する」ことをうたっています。
(1)ペットフードの安全を確保する体制
国は、安全なペットフードのために守るべき基準と規格を定めています。事業者(製造業者、輸入業者、販売業者)はそれをしっかり守って製造、輸入、販売を行います。又、事業者は、その記録を帳簿に記載しておく義務があります。
(2)基準・規格
ⅰ)基準
農林水産省、環境省の「愛玩動物飼料の成分規格等に関する省令」で定められています。
・製造方法の基準
①有害な物質や病原菌を含んだ原材料を用いてはならないこと
②加熱や乾燥をする製品では、病原菌が繁殖しないように製造すること
③プロピレングリコールを用いてはいけないこと
・表示の基準
ペットフードに次の5項目の表示を日本語でしなくてはならないと規定しています。
①ペットフードの名称
②原材料名
③賞味期限
④製造業者、輸入業者または販売業者名および住所
⑤原産国名
ⅱ)規格
「愛玩動物飼料の成分規格等に関する省令」で定められているもので、ペッフードに含まれる添加物(酸化防止剤)、農薬5種類、汚染物質(アフラトキシンB1)について含有量の基準値が定められています。
事業者の届け出と帳簿の備え付け
国はペットフードによる健康被害を防止する必要が認められたときには、そのペットフードの廃棄や回収を命じることができるようになっています。そのために、製造業者・輸入業者には届出の義務を課しています。また、ペットフードの製造、輸入、販売をする事業者は、製造、輸入、販売の記録を帳簿に記載しなければならないとしています。
立ち入り検査と罰則
ⅰ)立入検査
国はペットフードの製造、輸入、販売業者に対して報告を求めたり、定期的にまたは必要に応じて立入検査を実施することができます。
ⅱ)罰則
・個人に対しては1年以下の懲役刑または20万~100万円以下の罰金刑、または両方
・法人に対しては、1億円以下の罰金刑
以上のように、ペットフードは細かい決まりによって安全性が守られているのです。
ですが日本のペット関連法案は、動物愛護の先進国・イギリス、ドイツ、アメリカなどに比べるとまだまだ未整備です。
今後、諸先進国のやり方をとりいれて、生きものと適切に一緒に暮らすための基盤を改善していく必要があるといえます。
現状はまだ、飼い主側の判断で良質なものを見分けないと安心とは言えない状態なのです。