下痢しやすい愛犬にドッグフードの見直しなどのケア方法と病院での治療について
ワンちゃんの繰り返す下痢に悩んでいる、食欲はあるし元気もあるのになぜか下痢が治らない、良くなったり悪くなったりを繰り返す、など飼い主さんも困ってしまいますよね。
単純な下痢の場合、下痢止めの薬や整腸剤で良くなることが多いですが、長期間続く下痢は「アレルギー」や「フードが合わない」場合や、最悪は「ガン」などが原因のこともあります。
この記事では下痢しやすいワンちゃんにフードの見直しや散歩の仕方など飼い主さんができる自宅ケア方法と、病院での治療、病院にかかった方がよい症状などについても解説していきます。
目次
【慢性の下痢 対策】ドッグフードやストレス発散でケア
食べ物の見直し ドッグフードを変える
下痢止めのお薬を飲んでも下痢がなかなか治らない場合「食物アレルギー」の可能性があります。
ドッグフードを全く別のメーカーのものに変えるなどで様子を見てみましょう。
ドッグフードに含まれる「穀類」や「品質の悪いタンパク質」、「副産物」、「添加物」はアレルギーの原因になりますので、できるだけ避ける方がよいでしょう。
腸内環境の見直し オリゴ糖を摂取する
腸内細菌のうち善玉菌より悪玉菌の割合が多くなりがちなワンちゃんは、慢性的に下痢になりやすく、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
悪玉菌が多くなりがちなワンちゃんは、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)が悪い状態で、「発酵臭」がすることが多いです。腸まで届く乳酸菌を投与し、腸内の細菌のバランスを整える方が良いでしょう。
大事なのは、胃の消化酵素で分解されない乳酸菌を投与することです。また善玉菌は「オリゴ糖」を好み、悪玉菌は「オリゴ糖」を嫌いますので、食事にオリゴ糖を混ぜて善玉菌を増やしていくことで、腸内環境が整い下痢が落ち着いていきます。
完全に治るまでは長くかかるので、焦らず続けてください。
ストレスを発散する
ストレスは万病のもとです。
暑い、寒い、痛い、痒いなど、ワンちゃんも色々と伝えたいことがあると思いますが、飼い主はすべてを読み取ることが出来ません。そのためとストレスが溜まってゆきます。
しっかり遊ぶ、コミュニケーションをとるなどしてストレス発散できるようにしてあげましょう。
【急性の下痢 対策】原因と具体的な対策について
急性のアレルギー反応による場合
急性で下痢を起こした時には、まず「絶食」しましょう。
何かを食べると消化管が動きます。また、食べものの臭いがすると実際に食べていなくても消化管が活動し、消化酵素が分泌されることもあります。
消化管が動くとワンちゃんの腸に負担がかかりますので、だいたい1日は絶食するとよいでしょう。
寄生虫による場合
便に寄生虫が混じって出てきた場合は、寄生虫をビニール袋に入れて保管し、すぐにかかりつけの動物病院で受診してください。
寄生虫の種類を調べて、駆虫薬を処方してもらいましょう。
よく見かける寄生虫は「回虫」「鈎虫(こうちゅう)」「鞭虫(べんちゅう)」「瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)」「マンソン裂頭条虫」です。
瓜実条虫は、ノミを介して感染します。
マンソン裂頭条虫はヘビやカエルを介してうつりますので、ノミの予防をしっかりすることやヘビやカエルに接触しないように気をつけましょう。
そのほかの寄生虫は口からうつります。目に見えないタマゴからうつりますので、完全に予防するのは難しいので、1年に4回、季節ごとに駆虫薬を飲んで対応しましょう。
感染症
お散歩の時などに地面に鼻をこすりつけるようにして歩いていませんか?
実はワンちゃんは気になる臭いを嗅ぐだけでなく、同時に地面を舐めたりもします。
お腹の調子が悪いワンちゃんが下痢をした場所を通ると、きつい臭いのする便に興味を持ち、確認するために鼻をすりつけて臭いをかぎながら便の一部を食べてしまうことがあります。
どんな菌に感染したかわからないので、早期受診をしましょう。
【下痢 対策】その他のケア方法
温めてケア
ヒトでも体温が上がれば健康になれるという内容の本が流行りました。
実は、犬にとっても体温が低いことは良いことではありません。内臓が冷えるのは「血液の流れが悪い」ということです。血液は全身を回って体温を調節する役目があります。
熱エネルギーは筋肉で発生します。このエネルギーは筋肉のそばを通る血中の血液によって全身に運ばれます。
運動不足で筋肉量が少ないと、筋肉が活発に動けず熱エネルギーが減って、体温が下がりがちになります。腸の温度も下がるため腸内運動も停滞してきます。
その結果、下痢や便秘がおこりやすくなります。
お腹を温めたり、適度な散歩や運動をすることで、体温が上がり、腸の運動も活発になるので、下痢や便秘が解消されます。
水分の量を見直してケア
水分は大切ですが、多く摂りすぎても下痢になってしまいます。
水分量は、体重1㎏あたり50mlが平均的と言われています。
缶詰やパウチのドッグフードは80%近くが水分です。この場合、水分の必要摂取量も減らす必要があります。
また、下痢を起こすと水分も大量に失いますので、水分補給が必要になります。
ただし、急にたくさん水を飲むと下痢がさらにひどくなってしまいます。冷たい水は消化管を刺激しますので、「ぬるま湯で、舐める程度の量を頻回に」を基本に与えましょう。
散歩は短めに
下痢の際の、散歩は短めにしましょう。
長距離歩くと腸が動き、下痢が悪化することもあります。
症状が治まるまでは短めの散歩で対応しましょう。
動物病院での治療について
下痢には色々な症状があります。色や症状でどこの調子が悪いのかを知るコツがあるので紹介していきたいと思います。
こんな時には迷わず受診!危険な状態の見分け方
下痢の状態 | 疑われること | 危険度 |
---|---|---|
血便 鮮血 | 大腸付近からの出血 | できるだけ早めに受診 |
黒い | 十二指腸~小腸付近での出血 | 受診・早期に検査 |
白い | 胆管閉塞などの胆嚢の疾患 | 受診・早期に検査 |
ゼリー状 | 大腸の粘膜が炎症によりはがれおちている | できるだけ早めに受診 |
水状 | こじれた下痢で、大腸での水分吸収がうまくいっていない | できるだけ早めに受診 |
べたべた | 膵臓の消化酵素の分泌がうまくいっていない膵外分泌不全 | 受診・早期に検査 |
オレンジ色 | 黄疸が疑われる | 受診・早期に検査 |
ケチャップ様 | パルボウイルス感染症が疑われる。子犬では命にかかわる | 早急に受診 |
動物病院での受診の流れ
①診察
診察の際、以下のようなことを聞きながら原因を探していきます。
- いつ頃から始まったのか?
- 下痢の回数
- どんな下痢か?
- 食欲、元気、嘔吐の有無
- いつも食べないものを食べたかどうか?
- ドッグフードの変更をしたか?
便を持参すると糞便検査がスムーズにでき原因究明しやすくなります。
糞便検査は「細菌」「寄生虫」「消化の具合」「ウイルス感染の有無」などを調べていきます。
更に、腸の動きを聴診します。下痢になっている場合「キュルキュル」「ゴロゴロ」など激しい音が聞こえます。
パルボウイルス感染症の場合は簡易検査キットで約10分で検査ができます。ケチャップのような下痢で生臭い強烈な臭いがする場合は入院加療が必要になります。
この病気は非常に感染力が強く致死率も高いので注意が必要です。
②治療
下痢がひどく脱水している場合には点滴を行います。
糞便検査の結果によって投薬内容は変わります。
- 細菌性下痢:抗生物質、止瀉薬、乳酸菌製剤などを組み合わせます。
- 寄生虫性下痢:見つかった寄生虫の種類に合った駆虫薬を処方します。
- 食物アレルギー:アレルギーの原因になるものが入っていないドッグフードに変更します。
- ドッグフードの変更が理由の場合:まず、元のドッグフードに戻し良便になるかを確認してもらいます。今後ドッグフードの変更をする場合には、できるだけ良質のドッグフードを選んでもらうようにします。
- パルボウイルス感染症の場合:抗生物質・止瀉薬(ししゃやく)・乳酸菌製剤・駆虫薬などを処方します。
治療にかかる費用
診 察: 診察料 500円~
検査料: 糞便検査 1,000円~
治療費: 点滴 1,800円~
注射 1,500円~
内服薬 2,000円~
駆虫薬 500円~
月齢・年齢別:下痢を起こしやすいパピー・シニア犬へのアドバイス
犬の年齢 | よくある下痢の原因 | 対処法 |
---|---|---|
離乳期 (生後3カ月) |
・母乳からドッグフードへの切り替え ・寄生虫 ・細菌・ウイルス感染 |
・ドッグフードの変更 ・駆虫薬 ・止瀉薬(ししゃやく)・注射・点滴などの対症療法 ※子犬は下痢が続くと低血糖(★)を起こします。早めに受診してください。 |
成長期 (4~8カ月) |
・ドッグフードの量が多い ・ドッグフードが合わない ・寄生虫 ・細菌・ウイルス感染 |
・体重にあったドッグフードの量を計算し与える。 ・ドッグフードを変更する ・駆虫薬 ・止瀉薬(ししゃやく)、注射、点滴などの対症療法 |
成犬 | ・ドッグフードが合わない ・ヒューマンフード ・寄生虫 ・細菌・ウイルス感染 ・アレルギー |
・ドッグフードを変更する ・ヒトの食事を与えないようにしてもらう ・駆虫薬 ・止瀉薬(ししゃやく)、注射、点滴などの対症療法 ・アレルギー検査、良質なドッグフードに変更、療法食への変更、投薬 |
シニア犬 (7歳以降) |
・ドッグフードが合わない ・ドッグフードの量や回数が合わない ・ヒューマンフード ・寄生虫 ・細菌・ウイルス感染 ・消化器疾患 ・アレルギー |
・ドッグフードをシニア様に変更する ・量の計算、回数を増やし胃腸の負担を軽減する ・ヒトの食事を与えないようにしてもらう ・駆虫薬 ・止瀉薬(ししゃやく)、注射、点滴などの対症療法 ・頑固な下痢の場合慢性腸炎、消化管リンパ腫などの疑いがあるため早急に受診 ・アレルギー検査、良質なドッグフードに変更、療法食への変更、投薬 |
犬の下痢の原因とは?
慢性の下痢に多い原因
下痢が長期間長引く場合や、繰り返す場合は、以下のような原因が考えられます。
食物アレルギー
食物アレルギーがある場合、特定の食品を食べることで下痢になり、食べなかったら下痢が止まるという現象を繰り返します。ドッグフードの中にアレルギーのもとになるものがある場合は下痢が止まらない場合があります。
体質
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする「乳糖不耐性」の体質は、ワンちゃんにも起こる症状です。乳糖不耐性の場合、牛乳だけでなく乳製品全般が体質に合わないので「ヨーグルト」「チーズ」「乳製品が入っているおやつやドッグフード」は止めましょう。牛乳を薄めて与える飼い主さんがいますが、薄くても濃くても同じで、乳糖が入っていると反応して下痢になります。
消化酵素の分泌が良くないワンちゃんの場合は「膵外分泌不全(すいがいぶんぴふぜん)」という病気の可能性があります。これは、膵臓からの消化酵素の分泌が悪く、脂肪の分解がうまくいかなくなる病気です。大量の下痢便をし、油粘土のようなべたべたした便が出ます。栄養素がしっかり吸収できないため、いつもお腹をすかし、痩せる傾向にあります。膵外分泌不全の場合は病院での治療が必要になります。
ストレス
ワンちゃんも緊張から「嘔吐」「下痢」になることがあります。又、さまざまなストレスから免疫が下がり、外部からの病原菌に感染しやすくなります。消化管は自律神経でコントロールされていますので、ストレスや気持ちの問題に左右されてしまいます。
突発性の下痢に多い原因
突然、下痢をし始めた場合は、以下のような原因が考えられます。
急性のアレルギー反応
特定の食品に対して、極度のアレルギー反応がおこり消化不良から下痢が起きます。
寄生虫
寄生虫によって下痢が起こることがあります。
「回虫」「鈎虫(こうちゅう)」「鞭虫(べんちゅう)」は寄生虫の卵を口から取りこむことで感染します。「糞線虫(ふんせんちゅう)」は口から取りこむ場合と皮膚に穴を開けて侵入する場合があります。「瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)」はノミを媒介して感染しますので、ノミの駆除が重要です。「マンソン裂頭条虫」は蛙やヘビを媒介して感染しますので、庭で遊んでいる最中やお散歩の途中でカエルやヘビに遭遇する場合には要注意です。特に、マンソン裂頭条虫は駆虫しにくい寄生虫です。
このような寄生虫が感染すると、下痢を起こすだけではなく、食べたドッグフードの栄養素を横取りしてしまうため、やせて毛並も悪くなります。
感染症など
下痢を起こす細菌(腸炎ビブリオ菌、カンピロバクタ―、サルモネラ菌など)感染による細菌性下痢や、ノロウイルスやコロナウイルスなどによるウイルス性下痢があります。
中にはパルボウイルスのように致死的経過をたどるものもあるので要注意です。
下痢の症状によくある質問Q&A
野菜には繊維質がたくさん含まれています。腸のデリケートなワンちゃんの場合は、繊維質が腸を刺激して下痢になることがあります。上げる場合は少量にしましょう。
ビオフェルミンやエビオスなどの乳酸菌製剤は大量に上げなければ問題はありません。ヤクルトは犬にとって糖分が多すぎるので避けてください。正露丸、ブスコパンはあくまでもヒト用の薬なので投与は避けてください。
代表的な犬種だとフレンチブルドッグは下痢をしやすい傾向にあります。フレンチブルドッグはアレルギーが多いため、下痢をしやすいといわれています。
下痢をしているワンちゃんには脂肪が多いもの、繊維質が多いものは向きません。この2点に気をつけてあげれば手作りごはんでも構いませんが、いつものドッグフードをふやかして少量あげるのが手軽で、ワンちゃんにも負担がなく効果的です。
ウエットフードの方が水分含量が多いので下痢の時にはおすすめです。脂肪が多く含まれているものは負担になるので避けてください。水分補給は一気に飲むと、より下してしまうので、ぬるめの水を少量づつあげてください。
まとめ
下痢は、細菌やウイルスによるもの、食物アレルギーによるもの、虫やカエルなどによるもの、などさまざまな原因があります。
短期間お薬を飲めばよくなるような下痢は深刻ではありませんが、なかなか良くならない場合は検査が必要になることもあります。
まずは普段からできるだけ良質な原材料のドッグフードを選ぶこと、ストレスを溜めないよう遊んであげることなどを意識していきましょう。